Recovery and restoration service:frontea online,corp.

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(1)構成:INSネットとVPNワイドとCisco Voiceエンジニアリング

私のネットワークエンジニアリングといえば、日ごろは、企業用のイントラ及びワイドなデータネットワークばかりを構築しています。そんなことですので、YAMAHAやCentreCOM、シスコ、その他ネットワーク機器に至るまで、常にデータ通信ありきの設計・設定がメインですが、昨今のスマホ、デジタル映像・音声を見ても「データと音声、映像は、インフラも端末機も共用する時代」であると感じます。

ちなみに、2015年現在のCiscoホームページの製品メニューのトップもコラボレーションとありますね。シスコのコラボレーションソリューションの変遷も興味がありますが、ここでは、前世代のVoiceコラボ(Ciscoでは恐らくVoice二世代目)の製品を利用して、Voiceネットワークエンジニアリングについて、シリーズ話をしようと思います。

【背景】

今回は、一般的なINSネット契約(ISDN)の電話を利用している環境でCisco ISR(旧世代)を利用したら、どんなVoice環境(電話環境)を手に入れられるか紹介します。

ここでいう一般的なINSネットとは、家庭でもよくあるISDN回線契約で、iナンバーで電話とFAXを使い分けている環境を想定しています。本来、Voiceエンジニアリングは、DID(ダイアルイン)向けに展開するものですが、ここではあくまで一般ISDN回線の利用で展開を図り、その可能性を理解するものです。

さて、現在の電話環境はというと、YAMAHAの多機能ルータRTシリーズ(NVR500や旧RTV700、RT58i、RT55i等)を2台使い、1台目でアナログ電話機を2通話分確保し、さらに別の一台をSTバス配線接続し、FAX機を展開しています。

今回は、この環境を「Cisco ISRを利用した構成にしたら何が変わるの?」というものの解を追求してみます。

これについて優位に利用できるのが次の項目です。

  • Cisco Telephony Serviceが利用できる
  • Cisco Unified Communications Manager Express(CME)でコール制御、Voiceルーティングができる
  • Cisco Unity Express(CUE)で自動応答、音声ガイダンス、VocieMailが展開できる

多機能ルータRTシリーズでも過去にRTV700という比較的容易な構成でVoiceルーティングもできるような機材がありました。この環境と何が違うのか、他に面白いことがあるのかなどは、話の中で解を見つけてもらえればと思います。

【構成】

ここでは、RTシリーズ(FAX用)とISR(音声用)に運用分けする構成をしてみようと思います。一昔前の世代になりますが、ISRには「Cisco 1861 サービス統合型ルータ」を利用してみます。

C1861には、いくつかのエディションがありますが、国内向けで正式に販売されているのは、BRI x2ポート付きのものになります。また、CMEやCUE、Telephonyライセンスも必要です。今回は色々バンドル版という型のものを利用します。

  • C1861構成
    • BRI(PSTN) x 2
    • FXO x 4
    • Ether(LAN、100Mbps、PoE) x 8
    • Ether(WAN、100Mbps) x 1
    • Console
    • CME、CUE、電話ライセンス x 8(バンドル版のみ電話ライセンス付)
  • NVR500
    • STバス(PSTN) x 1
    • アナログポート x 2
    • Ether(LAN、1Gbps) x 4
    • Ether(WAN、1Gbps) x 1
    • Console
  • RTV700(旧モデル)
    • STバス(PSTN) x 1
    • Uポート(PSTN) x 1
    • PBXポート x 2
    • アナログポート x 2
    • Ether(LAN、100Mbps) x 4
    • Ether(WAN、100Mbps) x 1
    • Console

筐体は、RTX1200を2台重ねたくらいの大きさです。

私も普段は、データトラフィックに関するネットワークエンジニアリングばかりですから、NVR500とRTV700の中間的なポート構成で、iナンバーで利用するならSIPを利用した内線くらいなんじゃないの?と見えますし、ISDNをバックアップラインにしたWANポートのデータ通信用のルータとしか浮かばないように見えますが、そこは、CME、CUEが過分に能力を引き上げてくれます。

また、LAN側が標準でPoEですから、Wireless IP Phoneがスマートに展開できそうなことに気づきます。が、それだけでもないんですね。

  • Ciscoは、割と以前からL2TPv3に対応
    (RTX1200ですと、最近のFirmwareからで、前世代RTV700やNVR500では不可)
  • Cisco IOSですので、VLAN等ネットワークの設定・管理に一貫性が保ちやすい
  • 8ポートPoEを利用して、ルータとスイッチング機能を一台でやり切り、Aironetを直結できる

ここで、特に重要にしたいのは、「同一セグメントのLAN to LAN接続」が容易にできるL2TPv3ですね。安価なモデルRTA/RTVではできなかった拠点間をセグメント内に押し込むVPNも、これ一台に集約できそうです。

つまり、能力上は拠点間をまたぐVoiceルーティングも一つのVoiceセグメントに配置できそうですね。

【写真】

写真は、C1861と展開予定のC7921G(IP Phone)です。

【なぜCiscoなのか】

いつもいつも、私は顧客に対し、実際にネットワークを展開するときには、「できればL3SWくらいはCiscoにして欲しい」と心の中で願っています。

(といいますか、ここは田舎ですので、その前に幾つかのイントラネットワークが在りうるならば、最低限L3SWは導入してほしいと願うことのほうが多いですが。。。)

一癖ある独自規格の採用がポロポロでてくるなど、倦厭したい話も聞きますが、私は前派です。

さて、なぜシスコなのか?スイッチとルータの2つについて、私感で思っているところを記載します。

なぜCiscoなのか?(L3SW)

これについて大きな課題として、万が一「マルチキャストルーティングの要望」が出てしまったらCisco以外でやり通す自信がないというものがあります。

例えばDLNAサービスは、機器探索プロトコルとデータ配信プロトコルは、別々で両者の組み合わせで成立できるサービスです。そして、機器探索プロトコルのほうは、マルチキャストルーティングを要望し、さらにHOP数及び応答速度も基準値を満たす要件があります。

複雑化したセグメント構成やステップの多いルーティング構成になってしまいますと、そもそもDLNAのような要望が上がった際にお手上げになりますし、また、可能な構成であっても明解なマルチキャストルーティングを構成するのにやはりシスコスイッチが欲しくなります。

L3SWでなぜCiscoなのか?の自己解は、追加要求があった場合に、別途機器調達が必要だったり、そのせいで設定個所が増えるのがセキュリティ面、能力面からも怖いからです。

また、それ以前に、安心できる速度効果・基礎能力効果もありますが。

なぜCiscoなのか?(Router)

こちらは逆に今ではさほど心で願うほどではなくまりました。が、次のような能力も随分前から実装されていたり、やはり場面によっては欲しくなります。

例えば、「NAT併用DNS Proxy」です。そうです一見すると、これは現在の庶民派ルータにもついてるではないですか、普通ですよね?!ということになりますが、はい、ほとんどに付いてます。

では、なぜIOS DNS Proxyなの?ということになりますが、これは、QueryのExchange能力に他なりません。IOSでは、随分前からLayer4の追加解釈として、NAT処理時のDNS Proxyに、実は翻訳機能(InとOutの)がついてます。

分かりやすく言いますと、DMZに置いた外向けHTTPサーバについて、その一部の機能をイントラ内部HTTPサーバが供給したい場合に、簡単には、Apache:HTTP構成の場合、ReverseProxyを利用することができます。

この機能のDNS版をルータで代行できますので、DMZに配置したDNSサーバについて、簡易な設定でイントラ向け回答とWAN向け回答の分別をCiscoルータで処理できたりします。

さて、なぜシスコなのか?悩ましいネットワーク構成でサーバの配置と提供機能の確実な実現を考えたとき、一部でもルータで代行できる部分を残しておきますと、保守やサーバ構築時の負担軽減やインフラ更新などでも応急対応できることが多く感じられるからです。

次回は、実際の設定を記事にします。